2014年8月19日火曜日

コールセンター改革事例4 ~コールセンターの応対力向上を目指せ!

●粘り・忍耐のベクトル合わせ

営業や販売スタッフと比べて、技術担当者の関心は圧倒的に「ヒューマンスキル(対人能力・コミュニケーションスキル)」よりも「テクニカルスキル(専門知識・技術)」に向いていることが多い。調理人がどんなに口がうまくても、きちんと料理できなければ仕事が成り立たないというのと同じで、それが乏しいとお客様の課題解決ができないことからも、当然のことである。しかし、だからといって「ヒューマンスキル(コールセンターで言えば応対スキル)」は後回しでいい、経験を積めば自然とついてくるものであり、わざわざ時間をとって勉強までしなくても…と軽視するのは問題ではないだろうか?
技術サポートコールセンターの重要なミッションは、障害が発生した際の「問題解決」(それにつなげる情報収集や提案等)であるが、
  1. 〈問題さえ解決すれば良い〉という考え方をとるのか
  2. 〈効果的・効率的な問題解決を通してお客様のビジネスの発展に貢献する〉、〈問題解決を通して信頼関係を強化する〉
というもう一歩先の目的を明確に認識しているかどうかが実は重要である。もう一歩先の信頼関係づくりとなると、求められるモノはより高度で深くなる。しかし、実はそれこそが、他社との差別化につながる時代であることを認識しておく必要はある。


私がうかがった技術サポートコールセンターでも、当初は「問題解決」が最終ゴールになっていた。そこで改めて、「問題解決を的確・迅速に行うことで、何を目指していくのか?」と問いかけ、マネージャーやリーダーに考えを出し合ってもらった。
最終的に、
「お客様企業の業務の効率化や安定運営が可能となり、さらなるビジネスの発展に寄与することこそがGOALである」
「となると、システム障害によってお客様のビジネスの発展を阻害する状況からいち早く脱却していただくために、不具合が発生している間の不安や心配を少しでも和らげ、お互いに情報共有しながら協力して速やかな問題解決を実現することが必要不可欠である」
という共通認識ができあがった。
すると、単に「テクニカルスキルさえ磨けば良い」ではなく、お客様と積極的に情報を交換し、何がベストの策かを考えることが大切である。お客様をそういう心理にリードするための「ヒューマンスキル(対人能力・コミュニケーションスキル)」があってこそ、目指すお役立ちが可能になる。つまりは、各担当者のコミュニケーションスキルの向上は、自社が発展していくために必ず取り組まなければならない戦略的な課題である、というところまで行き着いた。


しかし、私がうかがったコールセンターでは、「テクニカルスキル」は資格取得やテストなどでレベル評価が客観的にできるが、ヒューマンスキルをどのように測定・評価すれば良いのかがわからない状態だった。そこで、信頼関係を構築するためには、支援を求めているお客様の心理プロセスに沿ってどのように応対することが大切かを明文化したチャートを作成し、それぞれやるべきことを具体化して記入した。それをチェックシートとして活用することとした。ただしモニタリングをする測定者の判断基準がずれるおそれがある。そこで、マネージャー・リーダーを対象に〈聞き耳判定会〉(モニタリング)を定例的に実施し、判断基準を合わせることとした。これは、単に「ありがとうございますと言えているから○」というレベルではなく、あくまで顔が見えないお客様のリアクションも考慮して、ご満足いく対応になっているかをお互いに議論しながら判定していくというスタイルをとった。最初は1コール分析するにもすり合せるのに1時間かかるケースもあった。それだけに、おそろしく忍耐を要し、忙しいコールセンターにとっては相当な負荷がかかった。効率的には相当落ちる。カタチのないものを測定することへの苛立ちも出てくる。しかし、ここで中途半端に放棄したらもともこもなくなる。〈簡単にできることなら簡単に真似される。差別化するには、見えないところで差をつけることが大事。ディズニーランドも手っ取り早く表面だけを取り繕うカタチなら、あれだけ発展はしていない。見えない積み上げこそが強さの秘訣である。〉と発破をかけ、半分は自分にも言い聞かせながらの忍耐の時期だった。


数ヶ月これを定期的に実施したが、今から振り返るとこのプロセスがとても有意義であると感じる。なぜなら、毎回の議論によっておのずと顧客志向が定着してきた。それまでは、「うちの会社では…」「私どもの考えといたしましては…」という言葉が圧倒的に多かったのが、「お客様は…」「お客様のご都合といたしましては…」と、お客様の立場で考えることが習慣になっていた。中期的視点で見れば、そのような考え方を持つリーダーがこの期間に多く生まれたことが、その後のコールセンター改革の大きな促進材料になったことは言うまでもない。

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サービスデザイン研究所
Service Design Institute
代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)


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