2014年8月6日水曜日

コールセンター改革事例3 ~コールセンターの応対力向上を目指せ!

●達成感もないこんな職場にはいたくない!

問題とは、「あるべき姿」と「現状」とのギャップである。応対力を上げるにしても、”いったい何が本当の問題なのか?”という問題の定義をしなければ、真の解決策も見つけられない。しかし、意外にそれがないがしろにされているケースもある。

私がうかがった技術サポートセンターでも、センターとしての『あるべき姿』の基準がはっきりしていないため、現状が良いのか悪いのか、人によって判断が異なるという状況にあった。そこで、マネージャー・リーダー層と『コールセンターのあるべき姿』を再度明確化するミーティングを実施することになった。その際、できるだけ客観的な事実を元に問題を定義するために、以下のものを準備した。
  1. これまでのCS調査結果とリピートにつながる割合の相関関係
  2. コールセンタースタッフ(派遣含む)の従業員満足度調査(フリーコメント含む)
  3. チェックシートを活用したモニタリングスコア一覧(他社との比較結果)
  4. 顧客ごとの年間サポート契約金額と実際の応対件数のデータ(1件あたりの金額)
  5. CS調査結果のフリーコメントの分析による顧客からの期待値(大半の顧客は他社のコールセンターも利用しているため、比較をしているという前提)
  6. 他部署からのコールセンターに対する期待値のヒアリング結果(連携強化の視点で)
まずは共通認識を持つため、これらの材料を使いながら、コールセンターの現状について様々な角度から客観的に見つめ直す話し合いをした。マネージャーやリーダーは、日々時間に追われる中で、上記のような貴重な情報があっても、なかなか立ち止まって分析・活用する余裕がなかっただけに、ミーティングを進めるうちに以下のような声が上がってきた。

「いただいている保守料を年間の1件の障害対応の金額に直してみると、かなり高額になるんだね。それでもお客様は、システムがダウンする恐怖を考えると、保険としてかけてくださっている。それなのに、いざ障害が発生した際に、事務的に処理しようとか、時に面倒とかうるさいと思ってしまうのは間違っているね。」
「システムという人質があるから、仕方なくうちにサポートをお願いするしかないと思っているお客様も実際には多い。それを満足しているからと錯覚していた。他社では『いいサービスは次の営業』と思ってやっていると聞いて、看板に甘えていたんだと反省した。」
「一番ショックだったのは従業員満足度調査。うすうす、『良くはないのではないか』と思っていたが、他社と比較すると相当低い。みんな黙々とやってくれているから、そこまでとは気がつかなかった。特に、派遣のスタッフはシビアに他社の職場環境と比較しているから、問題点をよくわかっている。しかし、派遣スタッフの声を拾ったことはほとんどないから、これが正直な答えなんですね。」


率直な意見交換を行っていくうちに、徐々に「このままではまずい」という問題意識が醸成されてきた。では、これからどうあるべきか?今の企業サイドの発想ではなく、どのような発想でこれからを考えるべきか?その際『お客様の視点』『働く従業員の視点』『会社・他部署の視点』を書き出して、「皆がハッピーになるコールセンターのあり方とは?」について議論した。

意見として
・「本来発生しないはずの障害が発生してしまったことに対する危 機意識を持って、お客様のご事情をしっかり受け止め、少しでも 安心感を高める応対が必須。→はきはきした話し方・お詫び・復 唱・確認、状況とニーズを的確に引き出す質問、結論ー理由ー 
 経過にもとづく簡潔でわかりやすい説明、質問しやすい流れ、電
 話を切った後の不安心理を少しでも軽減するための今後の連
 絡方法についての明確な約束等をしっかり入れ込んだ応対プロセスの確立。」
・「そのための従業員教育の徹底」
・「他部署との連携を少しでも正確に早く行う方法の研究」
などがほとんど手つかずであるという反省があがってきた。

もしそれらが改善できれば
「お客様の感情にも配慮した的確且つスピーディーな対応でお客様の信頼を得る」→「『契約していて良かった』と思っていただければ、会社の業績にも貢献できる」→「従業員も誇りを持って働ける」という方向性が見えてきた。
その合意が得られてからは、現状に対する問題意識が飛躍的に高まった。



特に、これまでカタチとして見えにくかった派遣を含むコールセンタースタッフのやりがいについては、次のような他社のモデルを伝えた。

グローバルレベルでサービスが優れていると言われているあるサポートコールセンターでは、優秀な新人ほどコールセンターへの配属を希望する。なぜなら、コールセンターで2~3年経験を積むことで、多岐にわたる問題が見えてくるからである。その問題に対処するため、まずは幅広く知識を身につけなければならない。同時に、関係者との関係構築やクレーム対応を含む対人折衝力も強化する必要がある。顧客の評価もそのまま自分の評価に反映される。厳しいからこそ、他部署以上、幅広く早く会社の全体像を身をもって体験できる。それを基礎として、自分の希望する部署に行って優れたエキスパートになるケースが多く、ひとつの成功モデルとされている。
自分のビジョンに照らし合わせて、主体的に目的意識を持って3年を過ごす。だから、全てが勉強になる。コールセンターはそういう人財育成機関として位置づけられている。

「我々もぜひそういうセンターを目指そう。」マネージャーの口からその一言が出たことで、ようやくコールセンター改革の第一歩がスタートした。(続く)


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サービスデザイン研究所
Service Design Institute
代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)


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