2014年8月28日木曜日

コールセンター改革事例5~やればできる!一流になろう!

●応対品質検定を最初に合格したのは派遣スタッフ。危機感・競争意識・一体感の重要性 

<聞き耳判定会>でマネージャー・リーダーの判定の精度が上がったところで、いよいよスタッフ全員に応対品質管理のために、「応対品質検定」を実施することを告知した。
単なる通達では「また何かわけのわからないことが始まったな」とか、「なんで細かくチェックされないといけないんだ」という反発は必至である。
そこで、マネージャー・リーダーが分担して、小グループ別に詳しい説明会を実施した。
目的・メリット・具体的な進め方・狙う効果をすり合わせ、誤解や反発に対して丁寧に対応することにした。
また、具体的な応対の仕方についても全員を対象に研修を実施した。
それでも疑心暗鬼がすべて払拭されるわけではない。しかし一方でスピードも必要である。最終的には、100%の納得が得られなくても、プロセスの中でメリットが実感できれば理解が進むと判断し、検定をスタートさせた。

やり方としては、抜き打ち的にモニタリングテープを録るのではなく、自分で案件を2件ピックアップし、簡単な状況説明を加えて申請する方式をとった。その方が、より判定基準を意識した応対になることと、自分でベストを尽くしたつもりの応対を第三者が客観的に評価し、強みと課題をフィードバックすることでさらなる向上を目指してもらえるという想いがあったからである。

ところが、ふたを開けてみるとその申請が1件も出てこない。理由を聞くと「自信がない」「下手に申請して検定に落ちると恥だ」「様子を見てからでないと心配」「やり方に納得していないから」など様々な反応であった。強制力を使うという方法もあったが、それでは改革につながらない。

相談した結果、各リーダーが自分のチームで少しでも前向きにやろうとしている人の背中を押し、チャレンジさせることとした。
しばらくして、最初に申請を出してきたのは、派遣社員と2年目の若手社員だった。
皆で〈聞き耳判定会〉を実施し、現状を共有した。結果は散々で当然不合格だったが、担当リーダーから「これは彼一人の問題ではないと思うので、次回までにチーム内で勉強会を開いて、克服できるようにします。」という発言があった。
1ヶ月に2回判定会を実施したが、同じ派遣社員がめげずに何度も申請をしてくれた。
4~5回目のチャレンジで彼のテープを皆で聴いたとき、室内にどよめきが起こった。「最初の応対と比べると、まるで別人だね。」「気持ちを込めて丁寧に対応しようという姿勢が伝わってくる。」「お客様の反応も以前に比べたらとても協力的になっている。」「人はこんなに変わるんだね」。

100名近くいる応対者のたった一人のたった1コールの変化であったが、それまで粘り強くやってきた私たちにとっては、大きな変化の兆しだった。
合格者1号は正社員ではなく、派遣社員となった。しかし、その区別なく名前を貼り出し、朝礼で表彰した。心の中では照れくさくて反発もあるかなと心配もしたが、後で以下のような話を聴いた。 彼が果敢に挑戦してきたのは、「派遣社員でも正社員と同じように検定に関して丁寧な説明をしてくれ、研修までやってもらえた。しかも客観的に自分のコールを上司たちが評価してくれる。これは自分のスキルを伸ばす貴重なチャンスだと思った。派遣元の会社にそれを報告したら、ぜひチャレンジしなさいと言われた。自分が品質を上げることは派遣元の会社の信用を高めることに直結するからと。              
実際の指摘は厳しく、今まで何をやってきたんだろうと落ち込んでしまうこともあったが、一方で今それに気づかなければ、これ以上お客様の信頼を得ることはできないと思えた。表彰は気恥ずかしいが、それによって周りの人にもこのチャンスをどんどん活かしてほしいという気持ちがあったから」だという。
私はその時、”素直である”ということは自分のチャンスを広げる上で、最大の宝であると教えられた。


お客様から見れば、正社員も派遣もない。だから同じ研修等を行ったが、むしろ派遣会社の方が生き残りのための危機感が強かった。それがバネになった。せっかくの彼の努力を無駄にしないために、その後は「チーム対抗戦」というゲーム制を取り入れた。チームごとで納期内に全員が合格できるよう作戦を練り、勉強会を開き、進捗を公表する。競争意識と同時にチームの一体感を醸成する狙いである。                                                          第一歩が動き出すまでは相当なパワーが必要だったが、いったんボールが転がり始めると早い。この取り組みの成果は、最終的には全員合格という表から見える結果だけでなく、<お客様を配慮した丁寧な応対をすることで、お客様からも感謝の言葉や丁寧な応対が返ってきて、頼りにされているという実感が持てる>という”鏡の法則”がプラスに働いたことにある。 
仕事のやりがいは、自分たちの努力なくして手に入れられるものではない。逆にスキルを磨いて手に入れたやりがいは簡単には逃げていかない。彼らが誇りを持ってコールセンターの仕事に向き合えるようスキルアップを支援することこそが最大の会社の資産と言えるのではないかとこの取り組みを通じて考えさせられた。

プロジェクトの最後に、参考としてジョン・P・コッターの企業変革8段階を示したところ、マネージャーやリーダー達から「まさにこれだね」という声が上がった。コールセンター改革事例の最後にそれを紹介したい。

「変革を推進するための8段階のプロセス」
  1. 危機意識を高める
  2. 変革推進のための連帯チームを築く
  3. ビジョンと戦略を生み出す
  4. 変革のためのビジョンを周知徹底する
  5. 従業員の自発を促す
  6. 短期的成果を実現する
  7. 成果を活かして、さらなる変革を推進する
  8. 新しい方法を企業文化に定着させる
 出典:企業変革力  ジョン・P・コッター 梅津祐良訳  日経BP社

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サービスデザイン研究所
Service Design Institute
代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)


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