2014年5月27日火曜日

SVが足りなくて、指導が行き届きません!

コミュニケーターさんの離職率が業界の平均に比べても慢性的に高いセンターがあった。コールセンターの立地、物理的環境、業務内容、待遇、どれをとっても他社に劣っているところはない。むしろ恵まれている環境である。離職率が高いという事実は、人間で言えば多くの病気を引き起こす。そのセンターでは、
コミュニケーターが辞める⇒常に新規採用コストがかかる⇒新人教育の負荷が高い⇒SVのフォローが必要⇒他のコミュニケーターさんの指導・フォローが手薄になる⇒人が辞める…
というサイクルに陥っていた。

コミュニケーターインタビューを行った際に印象的だったのは、
「困ったときに助けてもらおうにもSVの手はふさがっている。ただ、間違った回答をしてはいけないので、他のコミュニケーターには聞いてはいけないと言われている。結局お客様をお待たせしたりあやふやな応対になったりして、後から叱られる。頑張って契約につなげても褒めてはもらえないのに、ミスをしたりクレームになるとSVさんの指導を受けることになる。それが続くと、結局私たちは”会社から示された目標(ノルマ)や方針に従って、言われたことをミスなく黙々とこなしてくれればいいと思われているのではないか”と感じる。この仕事は結構ストレスもたまるし、契約という成果が出ないと自分でもあせる。それを誰にも相談できないというのは、思った以上に心理的にしんどい。」
「よくこのセンターは笑顔がないと言われる。でもそれは、別にお客様に対して無愛想にしようと思ってそうなっているわけではない。”今日も〇コールこなして、面談の時に文句を言われないようにしないといけない”という考えが先にあるので、それに合わせるのに必死なだけ。プロセスを見てもらえるのは問題があったときだけ。だから、とにかく”結果(数値)”を出さなければという思いになる。時々それにも疲れてくると、もう辞めようかな、辞めたいなという気持ちになることはある。」

そして、「会社はどうせコミュニケーターが一人辞めたところで、次にまた代わりはいますからね。」とつぶやいた。確かに大勢のコミュニケーターさんが一斉に画面に向かって応対をしている。この中で、自分一人が辞めたところで、もしかしたら誰も気づかないかもしれないという気持ちになることもあるだろうと感じた。しかし、実は経営者やセンター長、そしてSVさんもそう思ってはいなかった。何とか離職を食い止めたい。何とかこのセンターに愛着を感じながら楽しく働いてほしい。それが笑顔となってお客様に伝わり、コールセンターの発展につなげたいと真剣に思っているのである。では、なぜこれだけの乖離が生まれるのだろうか?

人間は”視覚”情報が8割を超え、実際に見たモノから判断することが多い。また、その蓄積から「きっと~だろう、~ではないか」という仮説が生まれ、それを実証するような情報を集め始める。それが集積して「絶対~だ」という確信に変わる。
コミュニケーターの立場で言えば、どれだけ会社からコミュニケーターを大切に思っていると言われても、日々の身近なSVのちょっとした言動を通して、最終的に「この会社は…」という確信が根づく。それがまたコミュニケーター同士で共有され、不信感につながる。実際にセンターで観察していると、どのSVも慌ただしく動いているが、ほんのちょっとしたこと、例えば「今の応対では笑顔が出てましたね」とか「今日は順調に契約が取れてますね」とコミュニケータさんの目を見て嬉しそうに声をかけているSVのゾーンと、厳しい顔をして黙々と見回りをしているSVのゾーンでは空気が違っていた。

お客様が期待するサービスは「結果」+「過程」である。だから応対が重視される。それと同様に、コミュニケーターが会社に期待する働きかけも「結果」を出すための「過程」、すなわち”育成や支援のプロセスをどれだけ重視して、個人任せではなくきちんと品質管理をするか”であると言える。
忙しい中でも、コミュニケータとの接点を重視し、品質を充実させることによって、離職率も変わってくると考えさせられた事例だった。

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サービスデザイン研究所
代表取締役:袋井 泰江(ふくろい やすこ)

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2014年5月26日月曜日

音(言葉・声など)の奥にある”心”を読む仕事

最近よく、お客様に対しても部下・後輩に対しても、「聞く」のではなく「聴く(傾聴)」が大切と言われる。何が違うか?
広辞苑によると、広く一般的には【聞く】を使い、注意深く耳を傾ける場合に【聴く】を使う、とある。前者は“音を認識して意味を受け止める”という感じだが、後者は“何を言わんとしているか”まで理解しようとして能動的に聴くイメージがある。

ある研修でその違いを発表してもらったところ、ある若い男性オペレーターが以下のような話をしてくれたことが記憶に残っている。
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「聴」という文字は、《耳》《+(プラス)》《目(横になっているが)》《心》の組み合わせです。これは、単に耳だけでなく、プラスして心の目でしっかり見ないと必要なことが見えてこないことを表しているのではないかと思います。僕たちの仕事も、そういう気持ちでお客さまの心を受け止める必要があると思います。
しかし、本当にそれをやろうとすると、正直とっても疲れます。次々コールをとらなければならない状況下で、神経をそこまで使っていたら、数コールとった段階でへとへとです。だから、つい「あ、またこの件だな」とわかったつもりになって聞き流してしまう。似たようなコールが多いのも事実ですから。しかも、だからと言ってそれで問題になることはほとんどないので、それに慣れてしまいます。

ただ、そんな風に思っていたある日、小さな不満をおっしゃったお客様に、いつも通り《申し訳ございません。私から上に報告して、改善に努めます。》と流していました。物わかりの良い理性的なお客様だったので、それでもめる心配もなかった。”これで一丁上がり”という気持ちにすらなった時に、静かにお客様がおっしゃったんです。「あなたはスムーズに謝罪の言葉や対応の言葉が出てくるんですね。応対も安定感があるし、慣れているんでしょう。あなたの言い分もよくわかりました。ただ…」と言葉を濁されたので、ふと我に返って、おそるおそる「ただ…何でしょうか、教えていただけないでしょうか?」と勇気を出して聴きました。すると、「ただ、今の応対で、あなたは私の気持ちは何一つわかっていないと思いますよ。」という厳しい言葉が返ってきました。慌てて謝ろうとしましたが、「じゃあ、もう切りますね。」と静かに受話器を置かれました。
その時、《本当にお客様は怖い》と感じました。何がって、実は言葉の奥にある心を私たち以上に読んでいるのがお客さまだという事実に改めて気づかされたからです。

今や、自動音声応答装置でもかなりきれいな応対ができる時代です。でも、機械にできないことと言えば、お客様からすると「この人は気持ちをわかってくれた。共感してくれた。」という”お客様本位”の応対です。特に、お客様の年代層が上がってきていることを考えると、たくさんの経験を積んでおられる方が多いだけに、見る目も厳しいのではないかと思います。

常に効率性も重視しなければならないからこそ、実は、聞き流すのではなく聴くスキルを高めて、短時間で心を読んで対応できるスキルこそが、自分の存在価値であることに気づかされた一言です。」

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彼が言うように、心を読むのも心を掴むのもスキルである。極論を言えば、ホスピタリティーもスキルである。スキルは意識的に目標を設定して練習して磨かなければ、上達しない。

多くのセンターを回らせていただき、数値目標だけでなく、早い段階からオペレーターのそういったスキルの醸成を重視する組織風土を持つセンターは組織自体の成熟度も高く、働くことと学びや成長がイコールになっていると感じている。


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